ゼミを振り返って(2期生その3)
Nishikawa Lab., College of Tourism, Rikkyo University
Community Based Tourism, Tourism Policy, and Urban Planning
西川ゼミに関心を持っていただきありがとうございます。ここでは、このゼミとして目指したいことや、ゼミで取り組むこと、過去のゼミ生が感じるこのゼミの魅力などを詳細に記しています。ゼミ選びは大学4年間の生活を左右する、重要なものです。このページがみなさんのゼミ選びに役立つこととなれば幸いです。
はじめに
このゼミは、忙しく、ハードです。ゼミの時間以外にもたくさんの本を読み、たくさんの時間をディスカッションに使い、たくさんの地域の方々とともに、たくさんのプロジェクトを同時並行で動かしています。大学生のうちに、論文を書き、学術大会(いわゆる学会)で発表することもあります。月に1度のペースでまちあるきを行うこともありますし、追い込むときには、夜遅くまで学生主体の議論を行うこともあります。他大学の学生との合同ゼミを開催し、朝から夜まで議論しつづけることもあります。
専門としては、都市計画やまちづくりの観点による地域の見方や分析手法を基に、観光客や観光産業だけでなく、地域住民にとって望ましい観光のあり方を考えることを目的に取り組んでいきます。
2年生春学期に、文献精読で地域の視点から見る観光のあり方を学びます。2年生秋学期以降、3年生の春学期秋学期は、様々な地域で行政や民間事業者の方々と一緒に、地域プロジェクトに取り組んでいきます。地域プロジェクトこそが、このゼミ独自の特徴であり、もっともゼミ生が成長できる機会では、と思います。
3年生になると、地域プロジェクトに加えてそれぞれが研究テーマをもち、個人研究に取り組んでいくことになります。4年生は、卒業論文への挑戦が中心になります。
そのほか、学内や他大学(例:新潟大学や立命館大学、高崎経済大学、横浜市立大学、帝京大学など)のまちづくりや観光を学ぶ研究室とオンラインで合同ゼミを開催したり、大学生観光まちづくりコンテストに挑戦したり、各地で観光まちづくりの実践に取り組んでいらっしゃる方をオンラインでお招きするゲストトークを月に1度程度のペースで開催したり、まちあるきをおこなったりするなど、大学2年次から相当ハードに鍛えられる場が数多くあるのがこのゼミの特徴です。
このゼミで大切にしたい観光の考え方
①観光の対象となるような地域にもそこに居住する住民の生活がある!それを大切にした観光を考えたい!
観光には、必ず訪問先の地域があります。新型コロナの影響で、全国的にオンラインツアーも作られるようになっていますが、それでもどこかの地域が対象となって、観光が実現します。普段、我々は観光地を訪問すると、そこで楽しみたい、美味しいものを食べたい、思い出を作りたい、という思いでいっぱいになってしまいがちです。
しかし、多くの地域や都市というのは、本来は訪問客のことを前提として存在しているわけではありません。どんな地域にも、必ずそこに居住する住民が存在し、そこには住民1人1人の生活があるのです。例えば、観光地として有名な京都でも、そこは多くの住民が生活をする場です。確かに、温泉地など、外部から来訪する観光客のために存在するような地域も存在しますが、居住して生活している住民が全く存在しない地域はありえません。
そのように考えると、観光客というのは、本来的には地域住民が生活を送っている場所に、(勝手に)入り込んで、数日間滞在をする存在なのだ、と捉えることができるかもしれません。
このゼミでは、地域住民という存在を強く意識し、地域が将来に渡って持続的に存在できるために、観光はどうあるべきか?どのような観光が望ましいか?ということを大切に考えていきます。
②その地域ならではの個性を活かした観光を考えたい!
「観光」の語源は「国の光を観る」。光を現代の言葉に置き換えると、「地域らしさ」、あるいは「地域の宝」という言葉が当てはまるように感じます。新たなテーマパークを誘致して観光客を呼ぼうとするのではなく、その地域ならではの価値を活かした観光をこのゼミでは考えたいと思います。観光と聞くと、世界遺産や温泉、有名な寺社仏閣、壮大な自然を持つ地域など、一部の地域しか対象にならないように思うかもしれません。しかし、どんな地域にも、その地域ならではの歴史や文化、風習があるはずです。そうした地域固有の価値を、観光という手段を通して、地域内外の人たちに伝えていくということが、持続可能な地域を形成していくためには大切ではないか、とこのゼミでは考えます。そうすると、地域固有の価値を特定し、それを高めていくための方法を模索することになります。地域ならではの個性を最大限理解し、引き延ばすこと。それが、観光まちづくりの最初の一歩です。
ただ、地域固有の価値というのは、案外地域住民も認識していないこと、気づいていないことがあります。そのとき、第三者としての外部の視点で地域固有の価値を発見するという役割が必要になります。ゼミは多くの地域と関わらせていただいていますが、少しでもその役割を担えるようになりたいものです。さらに、地域固有の価値をどうやって磨き上げて、観光客や地域住民にとって魅力的なものに仕上げていくか、というところまで到達させていきたいと考えています。
③観光客の「楽しみ」も大切にしたい。けれど、「浅い観光」ではなく、「深く地域らしさを楽しむ観光」を提供したい!
観光は我々にとって、大事な余暇活動であり、楽しみでもあります。ただし、観光客の振る舞いによって、地域住民の生活が脅かされるようでは問題です。観光を提供する側が、「地域らしさ」「地域の宝」を大切にし、それを観光客に提供したいという思いを持つものであるならば、その地域を訪れる観光客の立場としても、そういった「地域らしさ」に少しでも触れて楽しめるようになりたいものです。歴史的な町並みを横目に見ながら、食べ歩きを楽しむような観光や、「インスタ映え」スポットでただスマホを向けて写真を撮るだけのような観光も、確かに楽しいものかもしれません。しかし、せっかくお金と時間を掛けて楽しむ観光。もっと深く地域らしさを楽しむような観光に関心を持っても良いのではないでしょうか。観光を提供する側、観光を享受する側の双方の需要を満たしつつ、「地域らしさ」を感じるような観光のあり方を考えていきたいと思います。
④地域で実際に起きていることから学ぶ姿勢を大事にしたい!
このゼミは観光の現場で起きていることを大切に考えます。理論的な理想を学ぶことはもちろん大切です。しかし、それだけでは観光を正しく理解したとは言えません。実際の地域ではどのような課題を持ち、どのような人々がどのような思いを持って地域に関わり、地域を変えようとしているのか。その姿勢を知ると、わたしたちは深く感動します。このゼミは、多くの地域と関わりを持たせていただいていますが、その活動を通じて、地域で活躍される人々の姿勢を学びたいと考えています。そして、少しでも地域の方たちに役立つ活動を、このゼミとしてできたとしたら、それは最高の喜びです。地域のために活動することは前提ですが、地域を変えるのは我々だ、という「上から目線」ではなく、地域から学ばせていただいている、そして地域の方たちに少しでも貢献させていただきたい、という姿勢で地域とは接していきたいと思います。だからこそ、ゼミに所属したらまず最初に、地域との関わり方の姿勢について、しっかりと学ぶようにしています。
⑤学術的に貢献していきたい!
社会学者の上野千鶴子先生は、「大学で学ぶ価値とは、すでにある知を身につけることではなく、これまで誰も見たことのない知を生み出すための知を身に付けることだと、わたしは確信しています」と述べています。まさにこの言葉の通り、ゼミでの学びも最終的には、「誰も見たことのない知」の創出を目指します。具体的には、各プロジェクトで取り組んでいる内容を、学術的に位置づけ、それを論文として執筆し、学会での発表を目指します。
以上のような考え方を大切に、多くの地域と関わり、プロジェクトを進めていくのが、このゼミだと思ってください。
少しでも共感する点がありましたら、是非、このゼミに来てください。お待ちしています。
プロジェクトについて
現在、以下の5つの地域でのプロジェクトが進んでいます。
・埼玉県小川町:和紙を活用した観光まちづくり
・埼玉県川越市:オーバーツーリズムからの脱却
・東京都小金井市:都市の公共空間の利活用による、地域住民のための「地元観光」空間創出
・埼玉県草加市:まちあるきマップの作成
・千葉県野田市:リバーサイクリングツーリズムの検討
現在の2年生は主に草加市と野田市、3年生は主に小川町と小金井市に取り組んでいます。どのプロジェクトも始まったばかり。2022年に2年目を迎えるものなので、皆さんには、上記のプロジェクトにそれぞれ関わってもらうことを想定しています。
その他にも、多くの地域や民間企業(ITや観光まちづくりなど様々)の方に声をかけていただいており、まだまだプロジェクトは増える可能性もあります。
プロジェクトの主な内容は、こちらをご覧ください。
先輩の声に見る、このゼミの特徴
このゼミは、2019年4月に第1期生の迎え入れが始まった、まだ歴史の浅いゼミです。2021年度に入学した皆さんは、第4期にあたります。現・4年生が2-3年生のゼミ活動を通じて感じた、このゼミの感想を皆さんに共有します。