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新型コロナ研究:緊急事態宣言明けの学生の思考を読み解く

調査の背景

‌ 新型コロナウイルスの蔓延により、移動の自由が失われ、観光が不要不急のものとして取り沙汰されるようになりました。それは、観光に明るい未来を描いていた観光学部生にとっても重く響くものとなりました。
 こうした状況の中、本ゼミでは、緊急事態宣言下の5月に、「with コロナ、post コロナの観光行動・観光地はどう変わる(べき)か?」「with コロナ、post コロナの観光地づくり/観光まちづくりにおいて自分たちは何ができるか?」という問いでオンライン議論を行いました。この議論を通して、自身の居住地周辺にある魅力に気づき楽しむ「地元観光」という考え方の大切さを共有しました。また、「外出自粛の必要がなくなったら、人々はこぞって外に出るのかもしれないが、その際にどこに行くのだろうか。」という疑問から、同年代の学生の考えを把握しようという試みに発展し、幾度もの議論を重ねてアンケート票を作成し、調査を行いました。

調査を実施した学生の思い

‌ 新型コロナウイルスの感染拡大は、全国に大きな影響を与えることとなりました。その中でも、観光業は、人の移動が制限されたことで「観光」そのものが出来なくなってしまい、とても大きな打撃を受けています。私達は「観光を学ぶ学生として」何かできることはないかと考え、私達と同年代の人に対して新型コロナウイルスと観光についての意識を調査することになりました。そして、その結果を公表することで、これからの観光のあり方を見つけられるような貢献をしたいと考えました。
 この調査にご協力してくださった方の多くは、今後の観光に対して、とても関心をもっています。この調査結果を通じて、今の若者がどのようなことを考えているのか伝わったら嬉しいです。
 この調査にご協力いただきました皆様に、お礼申し上げます。ありがとうございました。

調査レポート(2020年7月公開)

上記のレポートへのご感想・ご質問をいただけますと大変励みになります。どうぞ宜しくお願いいたします。
Q1 特に関心を持った調査報告をお選びください(複数回答可)

ご協力ありがとうございました

調査から導かれた論点

調査レポートの公表・報告会の実施

1)海外旅行好き層をどう国内旅行に取り込むか?


‌海外旅行に関心を持っていた人も地元観光に関心を持つ割合が高かった。GOTOキャンペーンは日帰りも含まれるため、地元観光を推進する機会になり得る。一方、地元観光を推進するためには、日常生活圏を観光する価値を地元住民に提供することが求められる。これまでと同じような地域のPRをするだけでなく、地元の新たな価値に気づくことができるような観光のかたちを作ることが求められるのではないか。

 

2)大学生の“もどかしい“旅行意欲をafterコロナに逃さない必要
 

‌大半の大学生が夏に旅行をしたくとも、計画に踏み出せないのは、背景に地域の意向を尊重しようという気持ちがあるためと考えられる。そのため、今後、旅行予約をしながらも新型コロナウイルス流行の状況を鑑みてキャンセルという選択を取らざるを得ないケースも生じうる。地域は、「行きたい」けれども「諦めざるを得なかった」客層をどのようにアフターコロナまで繋げられるか。情報発信等を続け、興味関心を維持させ続けることで今後の観光需要につなげる必要があるのではないか。

‌3)観光業界への関心を持ち続ける学生のために何が求められるか?
 

‌旅行会社などが新卒採用見送りが大々的に報道されるなか、観光学部生はもともと観光業界に関心のあった学生のうち、8割超が依然として観光業界に関心を持ち続けている。中でも観光行政の関心は高まっており、この機により一層、行政として観光に関わる仕事の魅力を学生に伝えていくことが求められる。また、観光への携わり方は宿泊業や旅行会社にとどまらない。様々な業種が観光と密接な関係にあることを学生に発信していき、観光に関わりたい学生の選択肢が増えると良いのではないか。

7月17日 第1回報告会(行政・民間事業者向け)

7月20日 第2回報告会(同上)

​7月24日 第3回報告会(立教大学学生向け)

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調査レポートに対する感想・意見

レポートに対する感想を把握するためアンケートを実施したところ、次のような意見をいただきました。

  • 学生とは思えないまとめ方で脱帽です。構成とか1分で~とか、プロっぽい芸が細かい。

  • 他大学で建築を学んでいる学生です。コロナ禍の中で、建築学生や建築に関する仕事に就いている社会人の方の考えをよく聞くようになりました。その中で「建物そのものを設計・デザインするだけに留まらず、その周辺でどういったコミュニティが形成されるかということや、まちづくり・観光にもっと焦点を当てて考えなければいけない時代に入っている」といった考えが多いように思います。自分もそのような考えになりつつあり、アンケートに参加してレポートを読み、より観光に関心を持つことができるようになりました。これからもSNS等での発信を楽しみにしております。ありがとうございました。

  • 全体的に整理されてて見やすかったです。他の学生が思ったより夏の旅行に行きたいと思っていることや、同じ観光学部生が観光の学びへの意欲を持ち続けていることが知れて参考になりました。

  • 観光行政に興味を持った方が多いことに驚きました。その理由を伺ってみたいと思いました。

  • 学生さんの率直なご意見参考になりました。 今後、マイクロツーリズムから「観光振興」が始まると思いますが、首都圏在住の学生さんの率直なご意見等は聞いてみたいと感じております。

  • 「夏に旅行に行かない」を選択した人について  そもそも、〈近場を訪問すること=観光・旅行〉と捉えておらず、〈旅行=遠方に、レジャーで〉という感覚を持っているからこそ、夏に「遠方にレジャーとしての旅行には行かない」という意味でこの選択肢を選んだ人もいるのかな…と思いました。都内では桁違いに感染者も多く外出すること自体が控えられてしまっているのかもしれませんが、地方で見てみると、地元観光は増えている印象があります。実際私の岐阜の友人も郡上や犬山(=岐阜市内から車で一時間もかからず訪問できる場所)などの近場に訪問することが増えている(インスタのストーリーやツイッターなどで見かけた感じ)気がします。しかし、彼らはこの近場への日帰り訪問をそもそも旅行と捉えているのかどうかが微妙なところであり、興味深いと思いました。 また、アンケート結果や最近のコロナの再燃の様子を見ると、夏は観光控えが起こりやすいのだと予想できますが、この傾向は遠方に何泊もするような旅行にとって顕著なのではないか思います。こう考えると、2年生の皆が言っていたように、この夏が持つ地元観光の可能性を大切にしたいな、と思いました。旅行という言葉を使ってしまうとどうしても「遠方にレジャーとして」というイメージを抱いてしまう人が多いと思います。(Gotoキャンペーンがこれが理由で避難されているように)改めて『地元観光』という言葉が浸透する必要性を感じました。

  • 地元観光と、そうではない観光、それぞれ観光客が求めることとそれに対して観光地側がするべきことは異なるのではないか?  例えば、近場を訪問する地元観光の場合、遠方へ宿泊する旅行よりも計画をたてる必要性が低いのかなと思いました。近場・日帰りの多さ、という理由から、「思い立ったらすぐ行動」ができるのが地元観光の良さの一つだと思います。(もちろん、遠方への観光の場合は計画するところから楽しめるという良さもあるかもしれませんが、私だったら計画を立てるのは苦手・面倒で、行きたいと思ったらすぐに友人を誘って実現できるという要素は魅力的だと思いました。)こういった考えの人も一定数いると想定すると、そういう情報収集をしていない人たち向けに、観光地側では①現地で仕入れられる情報②SNSで少し調べたらすぐに出てくる情報発信が今まで以上にが求められるのではないか、と思いました。

  • コロナ前後との意識比較がとても分かりやすく述べられていた。大きく変わった点もあればない点もある。それを記しているので今何が求められているかが分かりやすくなっている。また男女での意識の違いがあるというのは以外でした‥

  • スライドがとても見やすくて感動した。 総括レポートみたいな要約があるとより多くの人に見てもらえると思う。

  • 大学生が非常に様々な観点で資料をまとめており、楽しませていただきました。特に観光業界への就職に対する意識や観光学部で学ぶ学生の意義などといった領域が、なかなか通常の調査においては出てこない項目であり、興味深く拝見させていただきました。

  • 都市型観光の人気が下がっているということが興味深かったです。

  • 老若男女、観光に求めるものは、そう変わらないと感じた。やっぱり温泉か、と(いいことですが)。コロナ禍は、観光を見つめ直す機会となった。

  • これからの観光業界に明るい展望を持っていた学生のモチベーションを維持できるような話題が出てくると良いなと感じます

  • 職業の種類で、観光業の関心は薄れても公務員の観光関連の行政で働きたいひとが増えていることが興味深かった。

  • 自分自身が大学生の頃、旅に行くことで自分を見つめなおし、地元の良さを再認識したりと社会人になる前のモラトリアム期間として良い経験をしたと考えています。地域の重要性の再認識や学生の意識変化等、とても素晴らしいレポートだと思います。

  • 素晴らしいレポート!感染症対策に対する意識の男女差は予想通りでした。

本調査に関するメディア紹介

2020年8月13日 東京FM サステナ*デイズにて、本レポートを紹介いただきました(ゼミ生がラジオ出演)

        音声はこちらから聞くことができます。

2020年9月19日 毎日新聞埼玉版にて、本調査を引用した記事が掲載されました。こちらから。

2020年9月19日 雑誌 週刊AERAにて西川のコメントが掲載されました。

2020年9月23日 朝日新聞にてインタビューとして取り上げていただきました。こちらから。

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