ベッドタウンで観光を考えるということ

観光まちづくりコンテスト

 今年の夏、「観光まちづくりコンテスト」に出場しました。テーマは「持続可能な観光まちづくり」。新型コロナウイルスの影響で、様々な変化が起き、新たな観光のありかたや、ニューノーマル時代を見据えた観光まちづくりを考えることが課題です。

 私達の班が選んだ地域は、埼玉県草加市。草加市と言えば、草加せんべいや、松並木という有名な観光資源があります。その一方で、東京へのアクセスがとてもよいベッドタウンでもあります。駅前は大型商業施設が立ち並び、生活するのにとても便利。少し歩けば、松並木と川による、美しい景観が広がっていて、大きな公園で子供たちが元気に遊んでいます。私達は、何度か草加を訪れ、川で和舟の舟行体験を行っていることや、空き家を使ったリノベーションカフェが多いこと、枝豆や小松菜を中心とした都市農業が有名であるというような魅力をたくさん発見したため、それらを生かした「観光まちづくり」プランを考えようと、埼玉県草加市を選びました。


ベッドタウンでの観光に否定的だった自分

 さて、私が今夏のまちづくりコンテストを通じて、一番考えたことは、「なぜベッドタウンで観光を考える必要があるのか」ということです。これはワクワクするのではないか、面白いのでは、と思えるようなプランを、小さなものから壮大なものまでたくさん考えましたが、特に「なぜこの場所でまちづくりではなく、『観光まちづくり』をする必要があるのか、ベットタウンにおいても、市の総合計画で観光のページが設けられているのはどうしてなのか」を、私はよく考えました。

 私も、首都圏に近い、いわゆるベッドタウンに住んでいます。祖母も、母もずっとベッドタウンに住んでいて、「もしも家の近くが観光地になったらどうする?」と問いかけると、「ここが観光地になることは考えられない。」「住むのにはいいけれど、観光する場所はないじゃない。」「知らない人が入ってくるのが怖い。」という返答をいつも聞いていました。たしかに、自分自身でも自分の地元を観光地にはしたくないと思っていました。観光地になることと、住みやすいまちになることは対立すると思ったからです。住む場所としてのその地域の魅力と、観光地としての地域の魅力は違う、どちらも兼ね備えることは難しいと考えていました。


地元の人が地元を観光する

 そんな中、まちづくりコンテストのための議論を重ねていると、住んでいる地域を、地元の人が観光することが、持続可能なまちづくりにつながるのではないかという仮説を立てました。具体的には、地元の人が地元の魅力を発見し、その魅力を地元の人自身の手で高め、他の人に発信していく、このサイクルが地域全体に広がることで、多くの人が地元へ愛着を持ち、まちづくりの活動にも積極的に参加するようになるのではないかという仮説です。これが私達が考える観光まちづくりです。


地元を観光することによる効果

 「ベッドタウンに住む人が地元を観光する」

このことが行われることで、二つの効果が期待されます。

 一つ目は経済効果です。ベッドタウンに住む人は、市外で働いている人が多いため、外で働いて得たお金を市内で多く使うことで、観光客と同じように、市は外からの利益を得ることが出来ます。二つ目はまちづくりを促進することにつながることです。自分が住む地域を観光することで、自分が住む地域の新たな価値に気づくことができます。その一方で、普段は何気なく過ごしていた地域をよく観ることによって、新たな課題に気づくこともあるかもしれません。それらの課題を解決するために、まちづくり活動へより積極的に参加するようになるのではないかと思います。


結論

 ベッドタウンで観光を考える必要性に対する明確な答えは、自分の中で今はまだ出せていませんが、観光を「国の光を観る、その地域の光を観ること」だと捉えると、少しわかる気がしました。観光というと、外からたくさんの人を呼ぼう、とにかくたくさんPRをしよう、というイメージを持ちがちですが、その地域の光、魅力を観ることが出来たら、それはもう観光だと呼べるのではないでしょうか。ベッドタウンに住む人にとって、いつも生活しているまちは、「ただ便利なだけ」というメリットにしか気づけていないかもしれません。それが、「観光」という言葉をまちづくりに付け加えることを通して、少し散歩してみたくなったり、地域の食材を食べたいと思うような、新たな地域の魅力を発見できるまち、つまり地元の人が地元を観光できるまちに変化していくのかなと思います。「観光」という言葉がもつワクワク感を、うまくまちづくりに入れ込むことで、ベッドタウンが持つ地域課題を解決できると期待しています。


YM